ロレックスの魅力はなにかと問われると、その答えの一つは「普遍性」だと思っています。

世界中どこに行っても通じるアイコン性、その飾りすぎず控えめでもないキャラクター、真面目で堅実な造り。

ロレックスにはバリエーションが数多く存在しますが、そのデザインにはわかりやすい共通項が存在します。ケースの形、ベゼルの形、ブレスレットの形。時代が変わるにつれて、リファインが重ねられてきましたが、基本思想は変わりません。

そんな、真面目一徹な時計作りが信条のロレックスにも、突然変異で生まれた特異なモデルが存在します。その一つが、今回お買取したこの腕時計。GMTマスター Ⅱ、リファレンスナンバーは16713です。製造年代は1987年から1988年ころ。

GMTマスターのベゼルといえば、おおまかに3パターン。一番目にする機会の多い「黒」。近年のモデルで多く見かける「黒青」。往年の人気色で最近復刻もされた「青赤」。

ところが、この腕時計。配色パターンはなんと「茶金」なんです。さらに文字盤まで茶色。私たちのような仕事をしていても、めったに目にする機会のない腕時計です。

短針単独調整機能とGMT針、回転ベゼルによって、異なる3つの時間帯を知ることができるGMTマスターⅡ 。パイロットのために開発されたモデルですが、海外の株式市場を意識する金融トレーダーにも多くのユーザーがいます。

この茶金モデルのRef.16713。私はこの腕時計を見ていると、1987年の映画『ウォール街』を思い出します。

作中にこの腕時計は登場しませんが、マイケル・ダグラス演じるゴードン・ゲッコーが身につけていそうな、妖しくも魅力的な雰囲気があります。もっとも、ステンレスとゴールドのコンビネーションモデルは彼の好みではなさそうですが。

 

この腕時計のディテールをご覧ください。

ベゼルの茶色と金色の交差する位置にある「6」の文字。モダニズムを感じるこの手法は、ロレックスの他のモデルで見た記憶がありません。

ラグに横穴が空いているタイプです。セミクラシックな風合いがあり、雰囲気にあっていると思います。

アンティークではなく、現代的でもない。この年代のロレックスには、独特の丸み・甘さがあります。

バックルはシングルタイプです。あまり使用されてこなかったのか、硬さが残っています。

おそらくこの腕時計、製造されてから一度も研磨をされたことがないと思われます。腕時計は傷だらけになっても研磨をすることで、ピカピカの状態にすることができますが、当然金属は痩せていきます。どうしても、力強さは失われるのです。多少の傷はありますが、研磨仕上げをしないほうがいいと判断しました。

さてこの腕時計。実は質フタバが、20年以上前にお客様へお譲りしたものなのです。長い時間を経て、また質フタバへ戻ってくることになりました。なんだか不思議な巡り合わせを感じる腕時計です。